相続により突然アパートを引き継ぐことになった場合、経営の難しさに戸惑う人は少なくありません。入居者対応や修繕費、退去時のトラブルなど、予期せぬリスクが生じる可能性もあります。
アパート経営を続けるか、売却して現金化するかの判断は、将来の資産形成に直結する重要な決断です。自分に合った選択をするために、不動産の相続手続きや売却する基準について分かりやすく解説します。
アパート相続。経営をせずに売却したいときの判断基準
両親や親族がアパートの賃貸経営をしていた場合、相続人のうち誰かが当該アパートを相続する、もしくは売却する必要があります。
アパートの立地状況などによっては賃貸物件としては利益が出しにくく、相続した人が負債をかかえる恐れがあるため注意が必要です。相続したアパートで賃貸経営を続けるか、売却して手放すか、判断基準の例をご紹介します。
アパート経営で赤字が続いている
相続時点で賃貸経営による赤字状態が続いているアパートは、相続後なるべく早く売却した方がよいでしょう。
賃貸経営の赤字を改善するには、まず赤字の原因を特定します。アパートの現状や過去のトラブル事例などさまざまな情報を知る必要があり、相続で新たにオーナーになった人がそのすべてを確認するのは容易ではありません。
その上、原因の特定が完了してから適切な対処をし、入居率が改善するまでにも時間がかかります。赤字状態の賃貸アパートを相続すると、大きな損失を出す可能性があるだけでなく、時間を取られる恐れがあるのです。
早期に改善できる見込みがある場合を除き、赤字が続いているアパートは売却するほうがよいでしょう。
アパートが老朽化している
相続したアパートが老朽化している場合も売却の検討をおすすめします。理由として以下の3つが挙げられます。
- 近いうちに修繕が必要になる可能性が高く、修繕費として高額の支出が発生する恐れがある
- 築年数、設備、見た目などから敬遠され、入居者が集まりにくい
- 築年数が経過するほど資産価値が下がり、売却価格が安くなりやすい
以上の理由から、仮に相続時点で黒字状態が続いていても、近い将来に赤字となる可能性が高いのです。
修繕積立金が足りない
相続時点の修繕積立金が理想とする額よりも少ない場合も、アパートの売却を検討すべきでしょう。
国土交通省の資料によると、1㎡当たりの修繕積立金の月単価目安は以下のように計算できます。
(計画期間当初における修繕積立金の残高+計画期間全体で集める修繕積立金の総額+計画期間全体における専用使用料などからの繰入額の総額)÷ 総専有床面積(㎡)÷ 長期修繕計画の計画期間(月)
上記の式によって算出された目安以上の修繕積立金があれば、大規模修繕により損失が発生するリスクは低いでしょう。反対に、計上されている修繕積立金が少ない場合、大規模修繕により高額の支出が発生するため注意が必要です。
将来の多大な損失を避ける意味では、修繕積立金が少ないアパートは早めに手放すと安心です。
参考:国土交通省|マンションの修繕積立金に関するガイドライン 平成23年4月 令和6年6月改定 国 土 交
相続トラブルの懸念がある、トラブルが発生している
不動産の相続は、以下のような理由から相続人同士のトラブルになりやすいといわれています。
- 財産の分割が難しい
- 賃貸物件の場合、相続した人だけが継続的な収入を得られる可能性がある
- 相続登記をはじめとした各種手続きの手間がかかる
相続人同士の仲が悪くトラブルに発展する懸念がある場合や、すでに遺産でトラブルが発生している場合は、アパートを売却して現金化するのも1つの手段です。
アパートを相続するための手続き
長期的に見て利益が出せそうな賃貸アパートであれば、相続することになるでしょう。相続する流れは大きく3つのステップに分けられます。
それぞれの工程について詳しく解説していきます。
ステップ1:誰がアパートを相続するかを決める
相続人が複数人いる場合、まずは誰がアパートを相続するか決める必要があります。このように遺産分割の方法を決めるための話し合いを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は相続人全員の参加および合意が必要です。1人でも話し合いに参加しない相続人がいる場合、遺産分割協議のやり直しが必要になるため注意してください。
ステップ2:アパートの名義を変更する(相続登記)
遺産分割協議によりアパートを相続する人が決まった後は、アパートの名義人を変えるための手続きが必要です。相続に伴い不動産の名義人を変更する手続きを「相続登記」といいます。
以前は、相続で名義人の変更手続きをしなくても法的な問題はありませんでした。しかし、2024年4月1日以降、相続登記の申請が義務化されています。そのため、不動産を相続することを知った日から3年以内に相続登記をしなければ、登記義務を怠ったとして10万円以下の過料が科される恐れがあります。
遺産分割協議がまとまらず3年以内の登記が難しい場合は、「相続人申告登記」を行うことになります。その後、遺産分割協議が成立した場合は、その日から3年以内に相続登記を行えば問題ありません。
相続登記の申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。必要書類の内容や記載方法は遺産分割の方法によって異なるため、必ず法務局の案内をご確認ください。
参考:法務局|相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック):法務局
ステップ3:相続税と故人の所得税を納税する
賃貸アパートを含む相続財産については、相続税の申告を行う必要があります。
相続税の申告および納付期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。遺産分割協議が終わっていない場合でも期限の延長はできません。
期限までに遺産分割協議が終わりそうにない場合、法定相続分通りに相続したと仮定して申告・納税する必要があります。遺産分割協議が終わり次第、修正申告または更正の請求を行いましょう。
なお、アパートの賃貸経営をしていた場合、亡くなった年の1月1日から亡くなる日までの間にほぼ確実に所得が発生しています。そのため、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告(故人の所得についての確定申告)も必要です。
参考:国税庁|相続税の申告のしかた(令和6年分用)
アパート経営をするために必要な手続き
相続によって賃貸アパートを取得する場合、不動産の相続そのものだけでなく、アパート経営を引き継ぐための手続きも必要です。
この章ではアパート経営をするために必要な手続きについて解説します。
入居者や管理会社に連絡する
相続に伴うオーナー変更について、なるべく早いうちに入居者や管理会社に連絡しましょう。管理会社に業務委託している場合は、入居者への連絡は管理会社が代行してくれるケースもあります。
オーナー変更に伴い必要となる連絡の範囲は、管理委託契約の内容によって異なるため、詳しくは管理会社に確認しましょう。
家賃の振込口座を変更する
口座名義人が亡くなった旨を金融機関が認識すると、口座が凍結されて一切の取引ができなくなります。そのため、アパートの相続を決めた段階で、家賃の振込口座を変更する必要があります。
遺産分割協議が完了していない場合でも、一旦は相続人の誰かの名義に口座を変更しましょう。家賃の振込口座の変更については、基本的に管理会社から入居者へ連絡してもらえます。
なお、遺産分割前に発生した不動産収入は、各相続人がそれぞれ受け取るのが原則です。ただし、毎月計算して分割するのは非常に手間がかかるため、「アパートを相続する人が家賃をすべて受け取る」といったように、家賃の分け方も遺産分割協議で一緒に決めてしまうケースが多くみられます。
ローン残債がある場合は金融機関に連絡する
アパートにローン残債がある場合、相続した人がローンも一緒に引き継ぐのが一般的です。ただし、債務の契約者を変更するためには、債権者である金融機関の承諾を得る必要があります。
金融機関に連絡せず債務者の変更手続きをしない場合、相続人全員が法定相続分に基づいてローン残債を負担することになります。ローン残債がある場合は、必ず金融機関で変更しましょう。
アパートに関わる業者の契約を確認する
アパート経営を始める前に、アパートに関わる業者との契約内容を確認する必要があります。契約内容の確認を怠ると意図せぬ契約違反を起こしてしまう恐れや、業者の対応に対する不満からトラブルにつながるリスクがあるためです。
なお、元オーナーである故人と新たなオーナーである相続人では、業者に求める要素が異なる可能性もあります。もし契約内容に疑問や不満があれば、相続を機に管理会社を変えるのも1つの方法です。
必要に応じて不動産の売却をする
アパート経営で安定した収益を上げるのは容易ではありません。不動産投資の専門知識が求められるだけでなく、賃貸経営をする物件に対する深い理解や小まめな状況確認が必要なためです。
また、知識不足や情報不足が原因で上手くいかないケースも多くみられます。アパート経営に不安がある場合、無理に経営を引き継ごうとせず、売却によって現金化するほうがおすすめです。
特に不動産会社への売却(買取)であれば、買い手を探す工程や内覧対応が不要なため、現金化までの期間が1カ月程度と短く済みます。相続不動産の扱いに不安がある方は、知識が豊富な不動産会社への売却を検討してみましょう。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。
